もしバナゲームの遊び方と効果|人生会議を後押しする注目カードの全貌
大切な家族やパートナーと「万が一のとき、どんな医療やケアを受けたいか」を本音で語り合うことは、誰にとっても避けて通れないテーマです。しかし、いざ切り出そうとすると「縁起でもない」「まだ元気なのに」と敬遠され、話し合いの場を持てないまま月日が流れてしまうケースが後を絶ちません。
そうした重苦しい空気を取り払い、自然な会話の中で本人の価値観を引き出す画期的なツールとして脚光を浴びているのが、人生会議カードゲームとして知られる「もしバナゲーム」です。米国発の「Go Wish」を原案に、日本の文化的背景に合わせて一般社団法人iACPが開発したこのカードが、一般家庭の団らんから医療・介護の現場まで急速に広がりを見せています。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:36枚の言葉から自分が大切にしたい価値観を4枚選ぶシンプルなルールで、重い終末期の希望を自然に言語化できる。
- 要点2:厚生労働省が普及を進めるACP(アドバンス・ケア・プランニング)の対話ハードルを劇的に下げるツールとして、医療看護研修や介護レクでも導入が加速。
- 要点3:カードは一般社団法人iACPの公式ストア等で購入可能。公式ダウンロード版やアプリはないものの、工夫次第でオンライン対話にも応用できる。
【基本ルール】もしバナゲームのやり方とカードの種類・遊び方ガイド
もしバナゲームの最大の特徴は、専門知識が一切いらない親しみやすさにあります。トランプ感覚でカードを引いて捨てる行為を繰り返すうちに、普段は意識していない「自分自身の生き方や死生観」が浮かび上がってくる設計です。
パッケージに収められているもしバナカードの種類は、全部で36枚あります。「痛みのない状態でいる」「家族と一緒に過ごす」「ユーモアを持ち続ける」「自分の希望を書面にして残す」「宗教的な儀礼を重んじる」といった、重病や余命宣告を受けた際に直面するであろう状況や願望が1枚ごとに平易な日本語で記されています。さらに、既存のカードにはない独自の希望を自由に書き込める「ワイルドカード」が3枚付属しており、多様な想いを反映させることが可能です。
基本となるもしバナゲームのやり方(4人プレイ/約30分〜45分)の流れは以下の通りです。
① プレイヤーに手札としてカードを5枚ずつ配り、残りを中央に山札として置きます。
② 順番が来たら山札から1枚引き、手元の6枚の中から「自分にとって優先順位が低いカード」を1枚選んで場に表向きで捨てます。
③ 他のプレイヤーが捨てたカードが自分にとって重要であれば、自分の手番でそれを拾うこともできます。
④ 山札がなくなるまでこの交換を続け、最終的に手元に残った4枚のカードが「もしもの時に自分が最も大切にしたい価値観」となります。
⑤ ゲーム終了後、なぜその4枚を選んだのか、そして途中でどのカードを手放すのが辛かったのかを、参加者同士で順番に共有します。
勝ち負けを競うゲームではありません。1人で行うセルフワークや2人でのペア対話にも柔軟に対応できる点が、多くの現場で支持される理由です。
なぜ重い終末期を笑顔で話せるのか?現場が絶賛するもしバナゲームの効果
医療やケアの現場において、患者や家族と行う終末期ケアコミュニケーションは極めてセンシティブな領域です。「どんな最期を迎えたいですか」と真正面から尋ねても、多くの人は戸惑い、口を閉ざしてしまいます。そこで真価を発揮するのがもしバナゲームの効果です。
心理学的な最大の利点は「カードという媒介(オブジェクト)があること」に尽きます。自分の内面を直接告白するのではなく、「このカードに書いてあるから選んだ」というワンクッションを挟むことで、心理的防衛が和らぎます。カードのテキストを音読するだけでも会話の糸口になり、「実は昔、親の看取りでこういう経験をしてね……」といったエピソードが驚くほど滑らかにあふれ出てきます。
また、「選ぶ」と同時に「手放す(捨てる)」という行為を強制される点も秀逸です。人は何かを諦めなければならない状況に置かれたとき、初めて無意識の優先順位を自覚します。「家族に迷惑をかけたくない」カードを捨てるのか、「意識が明晰なままでいたい」カードを捨てるのか。苦渋の決断を経て残った4枚には、その人の偽らざる生き様が色濃く反映されます。
国が推奨するACP(アドバンス・ケア・プランニング/愛称:人生会議)は、一度決めて終わりではなく「心境の変化に応じて対話を重ねるプロセス」そのものを指します。もしバナゲームは、その重い扉を軽やかに開くための「潤滑油」として極めて高い機能を持っています。
「縁起でもない」を打破する家族会議の切り出し方と実践のコツ
親が高齢になってきた際、万が一の延命治療や介護の希望を聞いておきたいと願う子ども世代は多いはずです。しかし、唐突に「延命治療はどうする?」「お葬式はどうしたい?」と切り出せば、「早く死ねということか」と感情的な衝突を生みかねません。こうしたデリケートな場面でこそ、カードの持つフラットな性質が役立ちます。
実践的な家族会議の切り出し方としては、お盆や正月、敬老の日など、親族が自然に集まるタイミングを活用するのが鉄則です。深刻な表情で切り出すのではなく、「テレビや雑誌で話題になっているカードゲームを取り寄せてみたから、みんなで試してみない?」と、知的好奇心を刺激するアプローチが最も摩擦を生みません。
家族でゲームを進める上では、以下の3つの約束事を共有しておく必要があります。
【家族プレイ時の3原則】
1. 相手の選択を絶対に否定・批評しない:「どうしてそれを捨てるの?」「そんなのおかしい」といった口出しは即座に対話を凍りつかせます。
2. 結論を急がない:医療処置の意思決定を無理に迫る場ではなく、お互いの価値観を「知る」ことだけに徹します。
3. パスする権利を認める:話したくないカードの理由を無理に聞き出す必要はありません。沈黙もまた大切な意思表示です。
「お母さんは家族と一緒にいることよりも、ひとりで静かに過ごす時間を大事にしたいと思っていたんだ」といった意外な発見が、将来訪れる介護方針の決定時にかけがえのない道しるべになります。
医療看護研修ツールから介護現場レクリエーションまで広がる導入現場
もしバナゲームは、一般家庭にとどまらずプロフェッショナルの現場でも定着しています。とりわけ病棟や訪問看護ステーションでは、新人や若手スタッフ向けの医療看護研修ツールとして重宝されています。
医療従事者は日常的に他者の生と死に立ち会いますが、自分自身の死生観と向き合う研修機会は意外なほど多くありません。同僚や多職種チームでこのゲームを体験することにより、「自分は痛みの緩和を最優先したいが、あの医師は意識の清明さを重視している」といった価値観のギャップを肌で理解できます。この相互理解が、日々のカンファレンスにおけるケア方針のすり合わせや、患者の主観に寄り添う共感力の向上に直結します。
一方、特別養護老人ホームやデイサービスにおける介護現場レクリエーションとしても応用が進んでいます。高齢者同士のグループワークに導入することで、「昔の思い出話」にとどまらない、人生の深い部分を分かち合える質の高いコミュニケーション空間が生まれます。
こうした対話の場をより安全かつ深くファシリテートする専門人材として、一般社団法人iACPが養成・認定しているのがもしバナマイスターです。マイスターは全国の地域コミュニティや自治体の講座、病院内でワークショップを主導し、参加者が心理的安全性を保ちながら対話を深められるようサポートする旗振り役として活躍しています。
【購入方法と入手先】ダウンロード版やオンラインプレイの有無を徹底検証
実際にゲームを手に入れたい、あるいは体験してみたい場合、どのような手段があるのかを整理しました。
最も確実なもしバナゲーム購入ルートは、開発元である一般社団法人iACPの公式オンラインショップです。また、Amazonなどの大手ECサイトでも公式または正規代理店から流通しており、価格は1セットあたり3,000円前後(税込・送料別)で販売されています。家庭で1つ所有していれば、世代を超えて末永く使い続けることができます。
「すぐに試したいからPDFのもしバナゲームダウンロード版はないのか」と探すユーザーも散見されます。しかし、現時点で公式によるカードデータの無料ダウンロード配布や印刷用PDFの一般公開は行われていません。これには、手元に置くカードの紙質や手触り、フォントの温かみといった「モノとしての質感」が対話の場において重要な心理的役割を果たすという、開発側の確固たる設計思想が関係しています。著作権保護の観点からも、正規品の購入が推奨されます。
また、遠隔地に住む離れて暮らす家族やリモート研修向けにもしバナゲームオンライン専用のWebアプリを求める声も上がっています。現段階では公式のデジタルブラウザ版や専用アプリはリリースされていませんが、実際の現場では以下のような工夫でオンライン実践が行われています。
・進行役(ホスト)が実物カードの手札をWebカメラで映し出し、参加者に選んでもらう
・ZoomやTeamsの画面共有機能を使い、36項目のリストからチャット機能を用いて選択と破棄を疑似体験する
オンラインであっても、適切なファシリテーションがあれば対話の深さは対面と遜色なく担保されることが、各地のマイスター主催イベントで実証されています。
【もしバナゲーム】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ルールを覚えるのは難しいですか?子どもや認知症のある高齢者でも参加できますか?
A1:ルール自体は「カードを引いて、不要なものを捨てる」だけのため、小学生高学年程度から直感的に理解できます。文字の読み書きや複雑な計算は不要です。認知機能の低下が見られる高齢者の場合、4枚を選ぶスタンダードルールにこだわらず、カードを並べて「気になる言葉を1〜2枚指差してもらう」といったアレンジを行うことで、無理なく対話を楽しめます。
Q2:ゲーム中に参加者が泣き出してしまったり、感情的になったりした場合はどうすればよいですか?
A2:終末期や死というテーマを扱う以上、過去の死別体験がフラッシュバックして涙を流されるケースは珍しくありません。その際は無理にゲームを続行せず、まずは「お話ししてくださってありがとうございます」と感情をそのまま受け止めてください。否定も過度な慰めもせず、沈黙を共有しながら本人のペースに寄り添うことが鉄則です。
Q3:もしバナマイスターになるには、医師や看護師などの国家資格が必要ですか?
A3:特別な医療・福祉の資格は必須ではありません。一般社団法人iACPが主催する所定の養成講座(講義および演習ワークショップ)を受講し、修了することで誰でもマイスターを目指すことが可能です。医療従事者のみならず、僧侶、ファイナンシャルプランナー、自治体職員、一般企業の有志など、幅広いバックグラウンドを持つ人々が認定を受けています。
まとめ:カードから始まる対話が「自分らしい生き方」をつなぐ
「最期をどう生きたいか」を問うことは、裏を返せば「いま、この瞬間をどう生きたいか」を再確認することと同義です。もしバナゲームが提供してくれるのは、単なる延命治療の選択肢チェックリストではなく、自分と大切な人が互いの生き方を認め合うための豊かな時間です。
終末期の希望は、年齢や健康状態、周囲の人間関係によって刻一刻と変化します。一度カードを交わして満足するのではなく、1年後やライフステージが変わったタイミングで再び卓を囲んでみる。その積み重ねこそが、万が一の事態が訪れたときに後悔のない選択を支える最大の備えとなります。まずは次の休日、食卓の上にカードを広げることから、かけがえのない人生会議を始めてみてはいかがでしょうか。 (出典: もし バナ ゲーム(Yahoo!ニュース))