完全試合とは?ノーヒットノーランとの違いや歴代達成者を徹底解説
野球界において「究極の記録」と称される完全試合(パーフェクトゲーム)。1試合を通じて相手打者を1人も出塁させずに勝利するという、天文学的な確率でしか起こり得ない大記録です。2022年に佐々木朗希投手が28年ぶりの快挙を成し遂げ、日本中を熱狂させたシーンは今なお記憶に新しいところですが、その厳密な成立条件やノーヒットノーランとの細かなルールの違いまで完璧に把握しているファンは決して多くありません。
1球の失投、味方のわずかな失策、判定ひとつで瞬時に消滅してしまう完全試合。プロ野球80年以上の歴史を振り返っても、達成者は片手で数えられるほどしか存在しない孤高の領域です。本稿では、完全試合の定義からノーヒットノーランとの決定的な相違点、歴代達成者の伝説、そして継投による幻の記録まで、その全貌を余すところなく解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:完全試合(パーフェクトゲーム)は「安打・四死球・失策すべてゼロで走者を1人も出さず、9回以上を1人で投げ切って勝利する」究極の記録。
- 要点2:ノーヒットノーランとの最大の違いは走者の有無であり、四球・死球・味方のエラー・振り逃げが1つでも発生した時点で完全試合の権利は消滅する。
- 要点3:NPB史上の公式達成者は佐々木朗希投手らわずか16人のみで、メジャーリーグ(MLB)でも歴代24人しか存在しない極めて希少価値の高い大偉業。
【基本ルール】完全試合(パーフェクトゲーム)の定義と成立条件
完全試合とは、野球の公式戦において「先発投手が試合開始から終了まで相手打者を1人も塁に出さず、失点ゼロで勝利投球を完了すること」を指します。英語では「パーフェクトゲーム(Perfect Game)」と呼ばれ、公認野球規則に厳格な成立要件が定められています。
通常の9回制の試合であれば、相手打者27人全員を連続でアウトに打ち取らなければなりません。達成のためにクリアすべき主な条件は以下の通りです。
- 被安打ゼロ:相手打者に1本もヒットを許さない。
- 無四死球:フォアボール(四球)やデッドボール(死球)を1つも与えない。
- 無失策(エラーゼロ):味方野手のエラーや捕手の捕逸・打撃妨害などによる出塁を一切許さない。
- 振り逃げ・ボーク等の出塁なし:第3ストライクの捕球ミスによる振り逃げなど、あらゆる形での出塁を完全に防ぐ。
- 完投勝利:先発投手が1人で最後まで投げ切り、自チームが勝利する。
つまり、グラウンド上の9人全員が一瞬たりとも隙を見せず、相手に「一塁ベースを踏ませない」ことこそが完全試合の絶対条件です。
完全試合とノーヒットノーランの決定的な違い|四死球・失策の扱い
野球ファンでも混同しやすいのが「完全試合」と「ノーヒットノーラン(無安打無得点試合)」の違いです。両者の境界線は極めて明確で、「ランナーを1人でも出したかどうか」にあります。
ノーヒットノーランは、相手打線に「ヒット(安打)」を打たれず、かつ「失点」を許さずに完封勝利すれば成立します。そのため、四球や死球でランナーを出しても、味方野手がエラーをして走者を背負っても、最終的にノーヒットかつ無失点であれば記録として公認されます。極端な例を挙げれば、四球を10個出してもヒットを打たれず無失点に抑えればノーヒットノーランです。
一方の完全試合では、四球・死球・失策による出塁がたった1度でも発生した瞬間に権利が消滅します。完全試合はノーヒットノーランの最も過酷な上位互換であり、「ノーヒット・ノーラン・ノーランナー」という完全無欠の状態を指すのです。
【NPB歴代達成者一覧】プロ野球史でわずか16人の奇跡
日本プロ野球(NPB)の長い歴史において、完全試合を達成した投手は過去にわずか16人しか存在しません。数万試合が消化されてきたNPBの歴史を鑑みると、その発生確率は0.03%前後という途方もない難易度です。
1936年のプロ野球創設以来、名を刻んだ歴代達成者は以下の通りです。
- 藤本英雄(巨人)- 1950年6月28日 vs西日本(日本プロ野球史上初の完全試合)
- 武智文雄(近鉄)- 1955年6月19日 vs大映
- 宮地惟友(国鉄)- 1956年9月19日 vs広島
- 金田正一(国鉄)- 1957年8月21日 vs中日
- 西村貞朗(西鉄)- 1958年7月19日 vs東映
- 島田源太郎(大洋)- 1960年8月11日 vs阪神
- 森滝義周(国鉄)- 1961年6月20日 vs中日
- 井上善夫(西鉄)- 1964年8月23日 vs阪急
- 八木一郎(サンケイ)- 1966年5月1日 vs広島
- 佐々木吉郎(大洋)- 1966年5月12日 vs広島
- 田中勉(西鉄)- 1966年5月12日 vsサンケイ
- 外木場義憲(広島)- 1968年9月14日 vs大洋
- 佐々木竹寿(大洋)- 1970年10月6日 vsヤクルト
- 高橋善正(東映)- 1971年8月21日 vs西鉄
- 今井雄太郎(阪急)- 1978年8月31日 vsロッテ(完全試合としては初の指名打者制下での達成)
- 槙原寛己(巨人)- 1994年5月18日 vs広島(平成唯一の完全試合)
- 佐々木朗希(ロッテ)- 2022年4月10日 vsオリックス(令和初、28年ぶりの快挙)
昭和40年代までは数年に1度のペースで記録されていましたが、打者の技術向上やバットの進化、データ分析の高度化に伴い、近代野球における完全試合の難易度は跳ね上がりました。今井雄太郎投手の達成から槙原寛己投手の達成まで16年、さらに槙原投手から佐々木朗希投手までは28年もの空白期間が存在したことからも、その難しさが浮き彫りになります。
佐々木朗希と槙原寛己の衝撃|平成・令和を揺るがした伝説の投球
日本プロ野球の歴史において、とりわけファンの脳裏に強く焼き付いているのが槙原寛己投手と佐々木朗希投手のふたりが演じた快挙です。
1994年5月18日、福岡ドームで行われた広島東洋カープ戦に先発した巨人の槙原投手は、直前の登板で打ち込まれるなど不調の最中にありました。しかし、立ち上がりから冴え渡る直球と切れ味鋭いスライダー、フォークを低めに集め、強力広島打線を完全に沈黙させます。9回裏ツーアウト、最後の打者を打ち取った瞬間に見せた雄叫びとガッツポーズは、平成のプロ野球を象徴する名シーンとなりました。
そして28年の時を経て2022年4月10日、ZOZOマリンスタジアムで衝撃の記録を打ち立てたのがロッテの佐々木朗希投手です。オリックス・バファローズを相手に先発した当時20歳の佐々木投手は、最速164km/hのストレートと落差の大きいフォークを武器に三振の山を築きました。
この試合で佐々木投手は、日本記録を64年ぶりに更新する13者連続奪三振の世界新記録を樹立。さらにNPB歴代最多タイとなる1試合19奪三振をマークするという、従来の完全試合の常識を覆す圧倒的なパフォーマンスで令和初の完全試合を完遂しました。バットにすら当てさせない支配的な投球内容は、国内外のベースボール関係者に大きな衝撃を与えました。
継投完全試合や参考記録のルール|完全試合が認められない特殊ケース
野球のルール上、完璧な投球を披露しながらも公式記録として「完全試合」に認定されない特殊なケースが存在します。その代表例が「継投による完全試合」と「降雨コールド等による短縮試合」です。
公認野球規則では、完全試合は「1人の投手が完投すること」が義務付けられています。そのため、複数の投手がリレーして相手打線を無安打・無四死球・無失策・無失点に抑えた場合、チーム記録としては「継投によるノーヒットノーラン」と扱われ、個人の「完全試合」としては公認されません。
記憶に新しいのは、2007年の日本シリーズ第5戦(中日対日本ハム)です。中日の先発・山井大介投手が8回までパーフェクトピッチングを継続していましたが、落合博満監督は9回に守護神・岩瀬仁紀投手を投入。岩瀬投手も三者凡退に抑えて球団史上53年ぶりの日本一を決めましたが、この「完全リレー」は公式の完全試合ではなく、あくまで参考記録として球史に刻まれています。
また、雨天などで5回や7回で試合が打ち切られた場合(コールドゲーム)に走者を1人も出していなくても、9回を満たしていないため完全試合とは認められません。逆に、9回を完全に抑えても自チームが無得点で延長戦に突入し、延長回で安打を浴びたりサヨナラ負けを喫した場合も、完全試合の記録は幻となります。
メジャーリーグ(MLB)における完全試合の記録と世界記録
150年以上の歴史を誇るメジャーリーグベースボール(MLB)においても、完全試合は至高のステータスです。これまでに達成された回数はわずか24回。1シーズンで1球団あたり162試合、全30球団で年間2,400試合以上が行われるMLBのスケールを考えると、日本以上に天文学的な確率であることが分かります。
近代MLBでは、2012年にフェリックス・ヘルナンデス投手(マリナーズ)が達成した後、長らく達成者が出ない期間が続きました。投手の球数制限(球数管理)が徹底され、打者の長打狙い(フライボールレボリューション)が主流となった現代野球では、完全試合の達成は極めて困難と見られていたためです。
しかし2023年6月28日、ニューヨーク・ヤンキースのドミンゴ・ヘルマン投手がオークランド・アスレチックス戦でMLB史上11年ぶり、歴代24人目となる完全試合を達成。99球での効率的な投球で偉業を成し遂げ、世界中のベースボールファンを再び熱狂させました。
【完全試合とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:味方のエラー(失策)でランナーが出た場合、完全試合はどうなりますか?
A1:味方のエラーによる出塁であっても、走者が一塁に生きた時点で完全試合の権利は完全に消滅します。ただし、その後もヒットを許さず無失点のまま勝利すれば「ノーヒットノーラン(無安打無得点試合)」として記録されます。
Q2:9回までパーフェクトに抑えても、味方が点を取れず延長戦に入ったらどうなりますか?
A2:9回終了時点で0-0の場合、完全試合は成立していません。延長戦に入っても出塁を許さず、自チームが得点して勝利するまで投げ切る必要があります。もし延長10回にヒットを打たれたり失点した場合は、9回まで完璧であっても完全試合の記録は一切つきません。
Q3:振り逃げでランナーが出塁した場合はどう判定されますか?
A3:第3ストライクを捕手が捕球できずに打者走者が一塁に生きた場合(振り逃げ)、記録上は奪三振がつきますが走者を許したことになるため、完全試合は消滅します。完全試合のためには、あらゆる形での出塁をゼロに抑えなければなりません。
まとめ:完全試合は野球界における最高峰の芸術的偉業
完全試合は、先発投手の圧倒的な球威と制球力、捕手の卓越したリード、野手陣の集中力あふれる堅守、そして試合展開の運というすべての要素が奇跡的なバランスで噛み合って初めて生まれる至高の記録です。
投球数の厳格な管理や継投策が主流となった現代野球において、先発投手が1人で27人の打者を完全に封じ込める光景は、以前にも増して特別な価値を持っています。次にグラウンドでこの歴史的瞬間が訪れるのはいつになるのか。一球一球の攻防に息を呑みながら、新たな伝説の誕生を待ち望みたいところです。 (出典: 完全 試合 と は(Yahoo!ニュース))